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青少年の性行動調査
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青少年の性行動調査

わが国の青少年(中学生・高校生・大学生)の性についてのさまざまな意識や態度、経験を明らかにし、社会的背景などとの関連を検討。1974年からほぼ6年ごとに全国的な規模で続けられてきたこの調査は、その継続性、広範囲な地域での広い年齢層にわたったものであることから、評価も高い。

「青少年の性行動全国調査」の目的と特徴

「若者の性」白書―第7回青少年の性行動全国調査報告―
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編/財団法人日本児童教育振興財団内 日本性教育協会
発行/小学館
定価/本体2,200円+税
     A5判226ページ

<内容>
●序章
第7回「青少年の性行動全国調査」の概要
●第1章
青少年の性行動の低年齢化・分極化と性に対する新たな態度
●第2章
欲望の時代からリスクの時代へ
─性の自己決定をめぐるパラドクス─
●第3章
青少年の家庭環境と性行動
─家族危機は青少年の性行動を促進するのか─
●第4章
消極化する高校生・大学生の性行動と結婚意識
●第5章
青少年にみるカップル関係のイニシアチブと規範意識
●第6章
高校生・大学生の避妊に関する意識と行動
─避妊行動の分化に着目して─
●第7章
現代日本の若者の性的被害と恋人からの暴力
●第8章
自慰経験による女子学生の分化
●第9章
性情報源として学校の果たす役割
─性知識の伝達という観点から─
●付表T
「青少年の性に関する調査」調査票
●付表U
基礎集計表(学校種別・男女別)

 今回で第7回を迎える「青少年の性行動全国調査」が開始されたのは1974年のことである。それ以後、1981年、1987年、1993年、1999年、2005年と、ほぼ6年間隔で続けられてきたが、最初から現在のような姿であったわけではない。調査地点を大都市、中都市だけではなく町村にまで拡張して「全国」調査の実態を備えるようになり、大学生と高校生に限られていた調査対象に中学生を加えて、「青少年」のかなりの部分をカバーできるようになったのは、1987年の第3回調査からである(表1参照)。その後も、調査地点数を増やす努力や、大学・短大進学者以外の若者(たとえば専門学校生)に対する調査可能性の検討などが続けられてきた。テーマや対象の性質上、この調査がさまざまな限界をもっていることは否定できないが、他方、この種のテーマや対象で40年近くにわたって続けられた調査は、国内はもちろん国外でも類例はきわめて少ない。質問項目の中には、第1回目から継続的に用いられたものも少なくなく、日本の青少年の性行動や性意識の変化を全国規模で時系列的に把握することができることから、近年では、国際的にもその意義が認知されてきている。
  ここで、「青少年の性行動全国調査」の特徴あるいはねらいを2点にまとめておくことにしよう。
  第一の特徴は、先にも述べたように、継続的に行われてきた調査ということである。継続調査は、類似あるいは同一の質問を用いることによって、着目する社会や集団(今回の調査で言えば日本の青少年)の「変化をとらえる」ことにある。すなわち、この調査の基本的な目的は、これまでの調査結果と比較することにより、生理的・心理的・行動的な側面にわたって、わが国の青少年の性的経験(デート、キス、性交など)が年齢に伴ってどのように進行するかを明らかにするとともに、その進行状況の時代的変化を明らかにすることにある。また、性をめぐる規範意識、性知識やその情報源など、性にかかわる青少年の意識の実態とその変化を明らかにすることも、毎回の変わらぬ目的となっている。さらに、近年、注目されている性的被害の経験についても、1993年の第4回調査から調査項目に含めている。
  もちろん、青少年の性行動や性経験については、その実態や変化を記述するだけでなく、そうした行動や経験における個人間および集団間での差異を、青少年をとりまく社会的背景に関連させながら理解することも重要である。今回の調査では、とりわけ近年の情報化の流れが青少年におよぼした影響に着目し、携帯電話の利用による友人関係のあり方の変容や、インターネットによる性情報の流れの変化と関連づけながら性行動の差異の原因を解明することも試みられている。
  第二の特徴は、地域的・年齢的な偏りのない青少年の性行動の現状を明らかにする、というねらいをもっていることである。このため、中学生から大学生までを対象に、なるべく多くの多様な地点での実施をめざしてきた。いうまでもなく、年齢層を絞ったり、特定の地点に着目したりしていくという方法もあるが、多分、そうした調査とわれわれの調査とは、観点が異なっている。
  限定された対象に行う調査は、その対象の「典型性」ないし「先駆性」に着目している。つまり、わが国の青少年の性行動における特徴が純粋(ないしは極端)な形で現れている(典型性)、あるいは今後わが国の青少年の間に一般化することが予想される性行動の特徴を既にもっている(先駆性)、という判断の下に対象が決定されているのである。これに対して、われわれの調査は、わが国の青少年のいわば平均的な性行動の実態を歪みなくとらえようとしている。その意味では、本調査は全国の青少年の性行動における「代表性」に着目しているといえる。
  こうした両種の調査の目的は互いに排反的なものではなく、むしろ補完的である。たとえば、典型的事例や先駆的事例の紹介や議論は重要であるが、「典型性」「先駆性」の判断はともすれば独り合点になりやすい。「代表性」をもったデータと比較することによって、判断の妥当性が確かめられるのである。他方、平均的な実態を重視することは、ともすれば行動や意識のヴァリエーション(散らばり)を見失ってしまうおそれがある。「典型性」「先駆性」をもった、そして多分、平均的な姿からは大きく外れたデータは、平均値の背後に存在するヴァリエーションを、具体的に生き生きとわれわれに教えてくれる。

 
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調査の内容

 前回の調査から、中学生と高校生以上(高校生・大学生)で調査票をわけ、2種類の調査票を用意した。以下の質問のうち、*がついた項目については中学生には質問をしていない。

(1)性経験・性行動
射精・月経(経験の有無、初めて経験した年齢)
性的関心(経験の有無、初めて経験した年齢)
告白経験
デート経験(経験の有無、初めて経験した年齢、デートにおけるイニシアティブ・費用負担)
キス経験(経験の有無、初めて経験した年齢、キスにおけるイニシアティブ、動機)
性交経験(経験の有無、初めて経験した年齢、動機*、避妊の実行*、これまでの経験人数*、性感染症や妊娠への懸念*、避妊の方法*、避妊を実行しない理由*など)
マスターベーション経験(経験の有無、初めて経験した年齢)

(2)性規範・性意識
性に関するイメージ性別意識(性別役割意識、性差意識、結婚観など)
性規範*(愛情のない性交、金品授受による性交、恋人以外との性交への態度など)
自尊感情

(3)性的被害
セクシュアル・ハラスメント(経験の有無と相手)
デート・ヴァイオレンス*

(4)性教育と性知識・情報
性教育(学校の性教育で学習した項目、性教育への評価)
性知識への関心(性について知りたいこと)
性情報源(友人、学校・教師、メディアなどの影響)
性知識*(避妊や性感染症などに関する知識)

(5)友人関係
学校の友人関係のイメージ、友人と街に遊びに行く頻度、よく話をする同性・異性の友人の有無、付き合っている人・性交をしている人の有無、友人の性経験への関心、性に関する会話の程度

(6)家族関係
家庭のイメージ、母親の職業、きょうだい構成

(7)メディア利用状況
専用のテレビ・ビデオ・パソコンの保有、携帯電話の利用頻度、インターネット(SNSも含む)の利用状況

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調査の対象と方法

 今回の調査では、次のような層化三段法で調査対象者の抽出を行った。すなわち、まず従来の調査との継続性も考慮しながら、都市規模ごとに調査地点を11地点選定した。その内訳は人口が100万人を超える大都市4地点(札幌市、東京都、京都市、福岡市)、その他の中都市4地点(青森市、弘前市、松江市、熊本市)、町村3地点(宮城県、栃木県、高知県)である。
  次に、この11地点から地域規模や学校種別、生徒数などを考慮して中学校9校、高校11校を選んだ。最後に、選ばれた学校の各学年から、当該学校とも相談しながら同意の得られた学級を調査対象集団として選定した。そして、こうして選び出された調査対象者に対して、自記式集合調査を実施した。すなわち、日本性教育協会から派遣された調査員が学級に赴いて、原則として封筒に入れたまま調査票を配布し、調査の趣旨や記入上の注意を説明した。そして、その場で調査票に記入してもらい、封筒に入れて回収に当たった。調査に要した時間は中学生で30分程度、高校生では40分程度であった。なお、プライバシー保護のため、調査員は生徒たちと面識のない者を派遣し、調査校の担当者(担任等)にはその場から退出していただいた。ただし、学校の事情等で担当教師がその場に残ることもあったが、その場合は机間巡視などはせずに、一か所に留まってもらった。
  これに対して、大学は、上記11地点のうち、大都市4地点および中都市4地点のなかから学校種別などを考慮して大学31校を選び、教員に教室で封筒に入った調査票を配布し、調査の趣旨を説明してもらった。そして、調査に同意した学生が自宅等で調査票に記入し、原則として翌週の授業で回収を行った。
  こうした調査は、2011年10月から2012年2月にかけて実施された。その結果、中学生2,504名、高校生2,578名、大学生2,600名、合計7,682名から調査票を回収することができた。そこで、このなかから全国の生徒・学生数の分布を考慮しながら、2011年度の文部科学省『学校基本調査』などをもとに調査地点・学年・性別で層化し、一定数を割り当てる形で事後ウエイトをかけ、最終的には表2に示した標本を今回の分析対象とした。

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主要な結果

 まず、ここでは主要な性経験として(デート経験・キス経験・性交経験)をとりあげ、この37年の間に(ただし、中学生の調査は1987年以降である)学校別・性別にどのような変化が起こったか示しておこう。

4-1 デート経験
 まず、デート経験率については図1に示した。大学生についてみれば、調査が開始された1974年時点から男女とも7割程度の者が経験しており、この時代からデートは多くの大学生によって経験される行動であった。その後も大学生のデート経験率の伸びはわずかであり、男女とも1993年には8割を超え、その後もほぼ同じ水準で推移している。また、性別によって経験率の差が小さいこともデート経験の特徴である。ところが、今回の2011年調査では、男女とも77%と8割を割り込み、初めて減少に転じた。
  これに対して、高校生のデート経験率には性差が大きく、どの調査年度でも女子のデート経験率が男子の経験率を上回っているという特徴がある。とくに1987年には10ポイント、1993年では7ポイントほど男女間で差がみられた。ただし、1999年以降はその差は縮小傾向にある。時系列変化に注目すると、1974年から1987年にかけては、男女ともデート経験率は減少もしくは停滞傾向を示していたが、1993年以降は男女ともデート経験率の増加が著しい。とくに男子は1993年には44%程度であったデート経験率が2005年には59%にまで伸び、このことが男女のデート経験率の差を縮小させたと言える。しかし、大学生と同様、2011年調査では、高校生においても男女ともデート経験率の低下がみられ、男子では5ポイント、女子でも3ポイントほどデート経験率が下がっている。
  中学生のデート経験率もやはり1987年当時は女子が男子を4ポイントほど上回っていたが、1993年から99年にかけて、とくに男子で増加傾向がみられたために、両者の差異は縮小した。ただし、1999年から2005年にかけては、男子でデート経験率がほとんど変わっていなかったために、再びデート経験をめぐる性差が拡大する兆しがみられた。他方、2011年の中学生のデート経験率は、2005年に比べると、男子ではほとんど変化はなかったが、女子で4ポイント近く減少している。

<図1 デート経験率の推移>

4-2 キス経験
 次に、同様にキス経験率の推移を学校段階・性別ごとに示したものが図2である。
  大学生からみると、まず男子では1987年から1993年にかけてキス経験率が増加している。1974年には男子大学生のキス経験率は45%に過ぎなかったが、1993年には68%にまで上昇している。しかし、1993年から2005年にかけては、男子大学生のキス経験率の上昇傾向は鈍化し、70%程度で頭打ち状態にあることがわかる。これに対して、女子の場合は1974年から1981年にかけて、1987年から1993年にかけてそれぞれ10〜13ポイントほど段階的にキス経験率が上昇した上に、1999年から2005年にかけても10ポイントを超える伸びを記録している。
  その結果、1999年までは大学生の場合、男子のキス経験率が女子の経験率を上回っていたのに対して、2005年には両者の性差はほぼ消滅している。これに対して、デート経験率と同様、2011年になると男女ともキス経験率にも減少傾向が顕著にみられる。2005年と比べると、男子では6ポイント、女子では9ポイントキス経験率が下がっており、男女とも1993年時点の水準に戻っている。
  高校生のキス経験率についてみれば、先ほどのデート経験率と同様、1974年から1987年にかけては停滞していたが、1993年から2005年にかけて男女とも明確に経験率の上昇がみられる。この12年の間に、キス経験率は男子の場合28%から48%に、また女子の場合32%から52%に大幅に上昇している。また大学生とは異なり、女子のキス経験率が男子を4ポイント前後上回っていることも特徴的である。その意味では、高校生における性行動の活発化はとくに1990年代に入って女子を中心に進行したものとみなすことができる。しかし、2011年にはやはり男女ともキス経験率は大幅な低下傾向を示し、2005年時点と比較すると、男子では11ポイントと大幅な低下を示し、女子でも7ポイント近く経験率が下がっている。
  最後に、中学生の場合、1987年から1993年にかけてのキス経験率の変化は男女とも少ないが、1993年から2005年にかけては男女とも10ポイント程度の経験率の上昇がみられる。とくに女子中学生のキス経験率は、1999年から2005年にかけて12%から19%へ大幅な上昇を見せ、男子の経験率を上回るに至っている。しかし、2011年では男子ではほとんど変化がなかったが、女子では7ポイントほど低下し、大学生や高校生ほどではないが、やはり性行動の経験率の低下傾向がみられた。
  キス経験率の時系列変化からみる限り、青少年の性行動の活発化がみられるのは1990年代から2000年代にかけてのことであった。そして、この時期、男子大学生にはキス経験率の上昇の停滞傾向が見られるものの、中学生や高校生では女子のキス経験が活発化し、男子の経験率を上回る兆候がみられはじめた。しかし、2010年代に入ると、一転して男女とも性行動の経験率は逆に減少する傾向が現れはじめた。

<図2 キス経験率の推移>

4-3 性交経験
 最後に性交経験についてみてみよう。性交経験の推移は、これまでと同様、図3に示した。これについてもキス経験と同様の傾向が指摘できる。
  まず男子大学生についてみれば、性交経験率は1974年から1993年にかけて23%から57%と大幅に増加したものの、1999年以降は63%程度で停滞しており、性行動の活発化に歯止めがかかったことがうかがえる。これに対して女子は、1987年から1993年にかけて26%から43%と性交経験率の大幅な伸びを見せた後、1999年には伸び率が停滞するものの、2005年になると再び10ポイントを超える経験率の伸びを示している。その結果、キス経験と同様、1999年までは男子の性交経験率が女子の経験率を上回っていたが、2005年では両者の差異は消滅している。しかし、2011年度には男子だけでなく女子においても性交経験率が大幅に低下し、2005年に比べて男子で7ポイント、女子に至っては14ポイント性交を経験する者が減少した。その結果、女子の性交経験率は再び男子を下回ることになった。
  高校生の場合、キス経験率と同様、やはり性交経験率の伸びは1970年代から1980年代まではわずかである。そして、性交経験率がとくに上昇したのは1993年から1999年にかけてであり、男子で14%から27%へ、女子で16%から24%への増加がみられる。ところが、2005年にかけては男子の性交経験率はほとんど変化していないのに対して、女子では6ポイントほどの経験率の上昇がみられ、ここでも女子の性交経験率がわずかではあるが男子の経験率を上回るに至っている。しかし、大学生と同様、2011年になると、とくに男子で経験率の低下が著しい。2005年に比べて、女子高校生の経験率の低下が7ポイントほどにとどまったのに対して、男子高校生では12ポイント近い低下がみられた。そのため、高校生においては、女子の性交経験率が依然として男子を9ポイントほど上回っている。
  これに対して、中学生では性交経験率は男女ともどの年度でも2〜4%程度であり、中学生にとっては性交経験はまだ少数の者が経験する性行動となっている。

<図3 性交経験率の推移>

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編/財団法人日本児童教育振興財団内 日本性教育協会
発行/小学館
定価/本体2,200円+税
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<内容>
●序 章 第7回「青少年の性行動全国調査」の概要
●第1章 青少年の性行動の低年齢化・分極化と性に対する新たな態度
●第2章 欲望の時代からリスクの時代へ─性の自己決定をめぐるパラドクス─
●第3章 青少年の家庭環境と性行動─家族危機は青少年の性行動を促進するのか─
●第4章 消極化する高校生・大学生の性行動と結婚意識
●第5章 青少年にみるカップル関係のイニシアチブと規範意識
●第6章 高校生・大学生の避妊に関する意識と行動─避妊行動の分化に着目して─
●第7章 現代日本の若者の性的被害と恋人からの暴力
●第8章 自慰経験による女子学生の分化
●第9章 性情報源として学校の果たす役割─性知識の伝達という観点から─
●付表T 「青少年の性に関する調査」調査票
●付表U 基礎集計表(学校種別・男女別)



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