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青少年の性行動調査

わが国の青少年(中学生・高校生・大学生)の性についてのさまざまな意識や態度、経験を明らかにし、社会的背景などとの関連を検討。1974年からほぼ6 年ごとに全国的な規模で続けられてきたこの調査は、その継続性、広範囲な地域での広い年齢層にわたったものであることから、評価も高い。

調査の目的と特徴

※以下の分析は、1994年発表のものです。

若者の性はいま・・・
青少年の性行動 第4回調査
(性科学ハンドブック vol.3)
日本性教育協会

編/財団法人日本性教育協会
A5判144ページ

<内容>
●はじめに
●第T章 日本の若者のプロフィール
●第U章 現代青少年の性と恋愛
●第V章 現代青少年の性意識を通してみるジェンダー関係
●まとめ
●付表
・調査票
・主要集計結果/学校種別・男女別      
・主要集計結果/年齢別・男女別
●あとがき

1-1 調査の目的と特徴

 財団法人日本性教育協会では、これまで、1974年、1981年、1987年の3回にわたって、「青少年の性行動調査」を実施してきた。今回の調査は第4回目にあたる。この調査は、以下の3つを主要な目的にしている。

1.
生理的、心理的、行動的な側面にわたって、わが国青少年の性的経験の年齢にともなう進行状況を明らかにする。とくに、第1回から第3回までの調査結果を比較することによって、その時間的変化を明らかにする。
2.
マスターベーション、婚前性交、性別役割等についての規範意識、結婚観、性に関する疑問など、青少年の性に関する意識の実態を明らかにする。同時に、その個人差の性的経験、社会的背景等の関連について検討を加える。
3.
これまで分析が比較的手薄であった、性的被害、エイズやSTD(性病)とのかかわりの中で考えられる性交や避妊などの実態を明らかにする。

以上のような目的を持った「青少年の性行動調査」は、他の類似の調査と比較すると、次のような特色を持っている。

1.
一定間隔をおいた継続調査であり、第1回(1974年)、第2回(1981年)、第3回(1987年)調査と同一ないし類似の質問を行うことによって、行動や心理の時間的な変化を知ることができる。
2.
大都市・中都市・町村にわたる中学生から大学生までを調査対象とすることによって地域的・年齢的な偏りのない青少年の性行動の現状を明らかにすることができる。
3.
性的経験(性行動)だけではなく、性に関する意識、家庭環境や学校への適応状況なども調査し、青少年の性とそれをとりまく状況とを総合的に明らかにすることができる。

1-2 調査の方法

 調査はこれまでと同じく、学級を単位とする集合調査法で実施された。
 まず、地域性を考慮しながら、全国の9地点を調査地域として設定した。9地点の内訳は、人口が100万人を超える大都市3地点(札幌市、東京都、京都市)、中都市3地点(秋田市、松江市、熊本市)、町村3地点(岩手県、富山県、高知県、それぞれの一町村部)である。第2回までの調査地域は、大都市と中都市に限定されていたが、偏りのない青少年の性行動の実態を明らかにするためには、町村部を除外することは望ましくないということはいうまでもないので、前回の調査から調査対象地点として町村が新たに加えられた。これらの9地点から、学生・生徒数、学校種別、学校規模を考慮しながら全体で83校を選び、最後に、各学年からいくつかの学級(場合によっては全学級)を調査対象集団として選び出した。
 こうして選び出された調査対象集団の全員に対して、集合調査を実施した。すなわち、調査員が学級におもむいて簡単な説明を行った後、質問票に回答を記入してもらい回収した。調査所要時間は約30分前後であった。調査員は、生徒たちとは面識のないものであることを原則とした。また、短大、大学については、すべての教師に依頼して実施した。
 調査は1993年11月から1994年2月にかけて実施された。回収された調査票は膨大な数に上るため、その中から、全国の学生・生徒数の分布を考慮しながら、地点・学校種別・学年・性別に一定数を割り当てる形で無作為抽出を行い、4944票(男子2440票、女子2504票)を選び出して分析の対象とした。表1には、地域別・学校種別による割当数、学校種別ごとの学年、及び、性別の分布が示されている。
 なお、以下の分析では、普通高校と職業高校は高校として、短大、国公立大学、私立大学は大学として、まとめて集計している。

表1

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主要な調査結果

2-1 性的経験の進行プロセス
 図1、図2、図3は、性の生理的側面、心理的側面、行動的側面それぞれの代表的な事象を取り上げ、年齢別経験率(当該年齢のものの中で、すでに経験しているものの比較であって、経験の年齢にともなう進行プロセスと見なすことができる)を示したものである。

(1)射精・月経
 図1は、性の生理的側面における代表的な指標といえる、男子の射精と女子の月経について示したものである。
図1
 月経、射精ともに、中学1年生時(12、13歳)ですでに経験率がかなり高く、しかも中学生時代(12〜15歳時)に急速に経験が進行するのが特徴である、そして、高校生になるとほぼ全員が経験している。
 生理的側面の低年齢化がほぼ限界に達したということは、定説になっている。事実、前回の結果に比べてみると、12歳時における経験率はぴったり一致している。ただ、中学生時代における経験率の上昇が、さらに急速になっているのが、今回の調査結果の特徴である。

(2)性的関心
 図2は、性の心理的側面としての、性的関心(「あなたは今までに、性的なことに関心を持ったことがありますか」)について示したものである。
 中学1年生でかなりの経験がある点は、射精・月経と同様であるが、女子に特徴的に現れているように、進行のプロセスはやや緩やかで、ほぼ全員が経験しているといえるのは、大学生(19歳以降)になってからである。この特徴は、他の心理的発達のプロセスにもほぼ共通している。
 男女を比較すると、最初(12歳)と最後(21歳)の経験率には、ほとんど差がないにもかかわらず、中間では男子の比率がかなり高くなっている。これは、男子の経験のほうが先行していることを示している。
 なお、前回の調査結果と比較しても、これらの特徴にはほとんど変化がないことがわかる。 図2

(3)性交
 図3は、性の行動的側面としての性交について示したものである。中学生時代(12〜15歳)の経験率はほとんど0であるが、その後急速に増加していき、20〜21歳で50%を超える。心理的側面とは異なり、男女の経験率には大きな差はみられない。とりわけ、18歳以降の男女差が、前回調査と比べると、接近してきたことがわかる。このことは、男女が対(カップル)になって行われ、その相手として、ごく近い年齢のものが選ばれることによるものであろう。
  射精・月経及び性的関心については、進行のプロセスは前回と基本的に同じといえるものであったが、性交に関しては、大きく異なっている。前回では18〜19歳からの急上昇が目立ったけれども、今回はその年齢が速まり、17歳頃から上昇が始まっているのが特徴である。
図3

2-2 20年間にわたる変化
 この調査の最大の特徴は、全国規模での繰り返し調査という点にある。青少年の性行動の詳細な実態については、もっと少数の事例に密着して観察やインタビューを行うことが必要であろう。しかし、ほぼ同様の内容の調査を繰り返すことによって、青少年の性行動の平均的な変化をとらえることができる。表2は、第1回(1974年)から今回(1993年)までの調査結果のうちから、主要な性的経験について「経験あり」と答えた者の比率を男女別、学校段階別に示したものである。
表2
 前回(1987年)の調査結果では、“性の低年齢化”がしばしば叫ばれているにもかかわらず、経験率が変化しないものや、むしろ低下している項目が数多くみられた。これについては、少なくとも高校生までの段階では、低年齢化が急速に進行すると予想されていた性的な経験に、ある意味での“落ち着き”が生じてきているのではないかと指摘された。他方、大学生については、キス・ペッティング・性交などの経験率が上昇し続けており、確実に早期化が進行していると指摘された。
 今回の調査結果を前回と比較すると、経験率の低下している項目は少なく、ほとんど変化しないか、大きく上昇した項目に分けられることがわかる(表では、5%以上変化した項目を網掛けで示した)。大きく上昇したのは、まず大学生のキス・ペッティング・性交の経験である。これらは、前回の調査でも指摘された点であり、さらに早期化が進んでいるといえよう。注目に値するのは、前回の調査では“落ち着き”が生じているのではないかと指摘された高校生で、キスおよび性交(ただし女子のみ)の経験率が大きく上昇している点である。明らかに性の行動的側面において、再び早期化(低年齢化)が進行する兆しがある。

表3

 早期化の傾向は、別の側面からもみてとることができる。表3は、経験率が50%を超える年齢を男女別に示したものである。ここでも、16歳から20歳くらいにかけて、年齢が低下している経験の多いことがわかる。
 この傾向が中学生にまで広がっていくかどうかについては、今回の調査結果からは判断できない。なお、表2の中では、中学生の射精・月経の経験率も大きく上昇しているけれども、図1について述べたように、これが必ずしも生理的な側面での単純な低年齢化を意味するものではないことの注意が必要である。

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