HOME > 研究事業について > 青少年の性行動調査 第5回

  • JASEについて
  • 研究事業について
  • 研究助成について
  • 出版物・資料案内
  • 研修会ガイド
  • 研究事業について
  • 現代性教育研究ジャーナル
青少年の性行動調査
  • 第8回(2017年)
  • 第7回(2011年)
  • 第6回(2005年)
  • 第5回(1999年)
  • 第4回(1993年)
  • 第3回(1987年)
  • 第2回(1981年)

青少年の性行動調査

わが国の青少年(中学生・高校生・大学生)の性についてのさまざまな意識や態度、経験を明らかにし、社会的背景などとの関連を検討。1974年からほぼ6 年ごとに全国的な規模で続けられてきたこの調査は、その継続性、広範囲な地域での広い年齢層にわたったものであることから、評価も高い。

調査の目的と特徴

※以下の分析は、2000年発表のものです。


「若者の性」白書 ―第5回・青少年の性行動全国調査報告―

編/財団法人日本性教育協会
発行/小学館
定価/本体1,800円+税 
     A5判208ページ

若者たちはいま――
性意識、異性関係は変容したか?
性行動の早期化は進んでいる?
求められる性教育とは?
中・高・大学生の「性」の実際を、25年の継続調査結果をふまえ、最新のデータで読み解く!

<内容>
●1章
 「青少年の性行動全国調査」の問いかけるもの
●2章
性行動の低年齢化がもつ意味
●3章
異性関係の変容と学校集団の影響
●4章
青少年にとっての「性情報源」の意味
●5章
性教育はどう受けとめられているか
●6章
性被害とセクシュアリティの形成
●付表. 主要調査データ

1-1 調査の目的と特徴

財団法人日本性教育協会では、これまで、1974年、1981年、1987年、1993年と、ほぼ6年おきに4回にわたって、「青少年の性行動調査」を実施してきた。今回の調査(1999年11月〜2000年1月)は第5回目にあたる。この調査は、以下の3つを主要な目的にしている。

1.
生理的、心理的、行動的な側面にわたって、わが国青少年の性的経験の年齢にともなう進行状況を明らかにする。とくに、第1回から第4回までの調査結果を比較することによって、その時間的変化を明らかにする。
2.
大きな社会問題でありながら、これまで分析が比較的手薄であった、性的被害、エイズとかかわる避妊などの実態をより詳しく明らかにする。
3.
マスタベーション、婚前性交、性別役割等についての規範意識、結婚観、性に関する疑問など、青少年の性に関する意識の実体を明らかにする。

同時に、その個人差の性的経験、社会的背景等の関連について検討を加える。以上のような目的を持った「青少年の性行動調査」は、他の類似の調査と比較すると、次のような特色を持っている。

1.
一定間隔をおいた継続調査であり、第1回(1974年)から第4回(1993年)までの調査と同一ないし類似の質問を行うことによって、行動や心理の時間的な変化を知ることができる。
2.
大都市・中都市・町村にわたる中学生から大学生までを調査対象とすることによって、地域的・年齢的な偏りのない青少年の性行動の現状を明らかにすることができる。
3.
性的経験(性行動)だけではなく、性に関する意識、家庭環境や学校への適応状況なども調査し、青少年の性とそれをとりまく状況とを総合的に明らかにすることができる。

1-2 調査の方法

調査はこれまでと同じく、学級を単位とする集合調査法で実施された。
 まず、地域性を考慮しながら、全国の12地点を調査地域として設定した。第2回までは大都市と中都市に限定されていた調査地点に、第3回から町村がつけ加えられて実施されてきたが、今回からさらに3地点が追加されて、より偏りのない青少年の性行動の実体が追究されることになった。12地点の内訳は、人口が100万人を越える大都市4地点(札幌市、東京都、京都市、福岡市)、中都市4地点(秋田市、静岡市、松江市、熊本市)、町村4地点(岩手県東磐井郡、栃木県下都賀郡、石川県河北郡・能美郡、徳島県板野郡・勝浦郡)である。これらの12地点に所在している大学・短大(ただし、大都市および中都市のみ)、高校、中学から、学生・生徒数、学校種別、学校規模を考慮しながら全体で58校を選び、最後に、各学年からいくつかの学級を調査対象集団として選び出した。
 こうして選び出された調査対象集団の全員に対して、集合調査を実施した。すなわち、監督者が学級におもむいて簡単な説明を行った後、質問票に回答を記入してもらい回収した。調査所要時間は約30分前後であった。監督者は、生徒たちとは面識のないものであることを原則とした。また、短大、大学については、すべて教師に依頼して実施した。
 調査は1999年11月から2000年1月にかけて実施された。回収された調査票は膨大な数に上るため、その中から、全国の学生・生徒数の分布を考慮しながら、地点別・学校種別・学年別・性別に一定数を割り当てる形で無作為抽出を行い、5492票(男子2846票、女子2646票)を選び出して分析の対象とした。
 表の(a)〜(c)には、学校種別ごとにみた調査対象者の地域規模別、学年別、性別の分布が示されている。
 なお、以下の集計表では、普通高校と職業高校は高校として、短大、国公立大学、私立大学は大学として、まとめて示されている。

ページのトップに戻る

主要な調査結果

第5回調査の結果をこれまでの調査と比較するならば、異質性よりも共通性が顕著である。もちろん変化がなかったわけではないが、変化はこれまでの調査でみられた傾向を延長した方向におこったものが大半である。  以下では、3点にしぼって代表的な調査結果を紹介する。

2-1 性行動の早期化
これまでの調査でも、青少年の性的経験を生理的、心理的、行動的側面に分けて、その進行と年齢との関係を追究してきた。その結果、生理的側面での経験の早期化はほぼ限界に達した。今回の調査でもその傾向は継続している。表1は、経験率(「経験あり」と回答した者の比率)の推移を学校段階別、男女別に示したものである。また図1は、最も典型的な性交の経験率について図示したものである。
  性交に関しては、高校生と大学生の経験率が一貫して上昇傾向(つまり早期化傾向)を示しており、とくに大学生女子の経験率が今回はじめて50%をこえた。その結果、高校生では全体のおおよそ1/4の者が、大学生ではおおよそ半数の者が性交経験をもつにいたっている。
  他方、中学生の経験率は3%から4%にとどまっている。ただし、中学生の性行動に早期化傾向がみられないわけではなく、デートやキスなどの経験率は、大学生ではあまり変化がみられないのに対して、中学生および高校生で今回大きく上昇した。

注)1974年、1981年は高校生・大学生(含短大)のみを対象に行われた。その他の空白部分は、調査項目に含まれていなかったものである。
また、1987年からは大都市・中都市に加えて町村部でも調査が行われたので、それ以前とはデータの性質が若干異なっている。

2-2 性的被害経験の増加
性的被害(セクシャルハラスメント、セクシャルアビューズ)経験は、前回(1993年)はじめて調査されたことがらであったが、女子を中心に多くの者が被害経験をもつことが明らかになった。前回と今回の調査結果を比較したのが図2である。今回も被害の中心が女子であることは変わりはないが、何らかの性的被害を経験したことがあるという者は、どの学校段階でも男女の別なく増加している。とくに、男子の比率の伸びが著しい。 ただし、この結果から直ちにセクシャルハラスメントやセクシャルアビューズが増加したという結論を導くことはできないだろう。セクシャルハラスメントやセクシャルアビューズに対する社会の認識が深まった結果、これまでは意識されなかった経験が「性的」な被害として意識されるようになった、という側面もあるからである。しかし、それを差し引いたとしても、青少年に対するセクシャルハラスメントやセクシャルアビューズは決して減少していないということはいえるであろう。 なお、性的被害の種類別経験率が表2に示されている。

2-3 変わらない男女の関係
前回(1993年)の調査では、女子の性行動の活発化が明らかにされる一方で、それが必ずしも男女関係の変化をともなっていないことが指摘された。図3は、性行動におけるイニシアチブを男女のいずれがとるかについての回答を、前回と今回で比較したものである。 パターンはまったく変わっていないことがわかる。デート(中学生)および性交(高校生、大学生)経験のある者に、自分と相手のどちらが誘う(要求した)のかをたずねると、「どちらともいえない」という回答が多いけれども、それを除くと、男子では「自分から」、女子では「相手から」という者が圧倒的に多い。前回との比較では、男子の「自分から」の割合はやや低下したものの、女子の「相手から」の割合は逆に上昇している。男が能動的、女が受動的という、いわば伝統的なパターンである。

これは、事実としてそうであるのか、あるいはそうあるべきだという規範の存在を示すものであるのか、両方の可能性がある。いま、男女の格差や女性に対する差別が大きな社会的関心をよんでいる。こうした現象の根底に男女の性別役割分業があることはよく知られており、性別役割分業に対して否定的な意見をもつ人が急速に増加している。今回の調査でも同様の変化がみられた。しかし、社会的場面における性別役割分業の否定と、青少年の性的場面おいて維持されている伝統的な男女関係のパターン(性別役割分業)とがどのような関係にあるのかは、今後追究すべき興味深い課題である。

ページのトップに戻る



ページのトップに戻る